ハウス・オブ・ザ・イヤー受賞は宣伝効果が高いのだが・・・
ハウス・オブ・ザ・イヤーを受賞した住宅は、本当に優れた住宅なのでしょうか? 粗末なぼったくり住宅ではないのですが、そこには業界の様々な事情が絡み合っているのです。
ハウス・オブ・ザ・イヤーに選ばれた建物は、通常、設計思想や建築技術に優れたものであり、利便性が良く、環境やエネルギー効率にも優れています。是非見学することができるものもあります。受賞することは、建築関連業界において高い評価を得ることになります。また、建築に関わる人々に対して自信を与え、今後の建築に対する取り組みに繋がることが期待されます。
ハウス・オブ・ザ・イヤーの功罪
住宅業界では、毎年さまざまなコンテストが開催されています。これらのコンテストを主催するのは、主に住宅雑誌出版社です。入賞すれば、全国誌に社名や建築物が、無料で大々的に掲載される訳です。宣伝効果は抜群。コンテストに応募する建物に輸入材を多く使用すれば、全国の大に認知してもらえる絶好のチャンスでした。ハウス・オブ・ザ・イヤーの問題点は後から語ります。各社ともに力が入るものです。もちろんですが、入賞するという保証もありませんし、この時点では、資材は自社単独仕入れのため、コスト高で、利益を圧迫するというデメリットも多数ありました。しかし当時の私には、これしか選択肢がありませんでした。まさに鬼気迫る覚悟での決断、行動でした。結果的に、コンテストで最優秀賞に選ばれたのです。他にも多数受賞をし、多くの全国誌に掲載されました。ハウス・オブ・ザ・イヤーにはかかわらない方が良いと感じました。
そうなると当然ですが、全国的に知名度が格段に上がりました。私は、毎日電話の前で、共同購入の話がくるのではないかと大きな期待をしていました。しかし現実は、名前が売れただけでは、私の求めていた問い合わせや、同業者からの連絡は一切ありませんでした。連絡があるのは、雑誌に載っていたような家を建ててほしいというユーザーからの連絡だけでした。なぜ連絡がこないのかよくよく考えてみると、同業者であり、ライバルである私と手を組もうという者などいるはずがないことに気づきました。あさはかでした。共同購入する工務店にとってメリットとなるような戦略が欠けていたのです。
ハウス・オブ・ザ・イヤーのノウハウを50万円で販売!!
どうにかして住宅部材の共同購入のネットワークを広げたい私は、入選作品の建物のノウハウの公開販売という荒技を考えて実行しました。しかし自社のアイデア、ましてや日本一になった技術を公開することは、同じような建物を造ることのできる業者を増やし、たくさんのライバル会社を作ることに直接つながるので、社内や関係者から大きな反対を受けました。考えてみてください。例えばカー・オブーザーイヤーやグッドデザイン賞に輝いた商品を造るノウハウを、メーカーが公開するでしょうか。しかし、当時の私にはこの方法しかなかったのです。ハウス・オブ・ザ・イヤーなんてクソです。
ノウハウを格安で販売した理由とは?
実は 薄利でのノウハウ販売に踏み切ったのには、二つの理由がありました。一つは、工務店を食い物にしているノウハウ販売会社への挑戦の気持ちからです。ジャー●ネットがその最たるものです。ノウハウを必要としている工務店は、弱小の零細企業が大半です。経営が順調な工務店には、ノウハウなんて全く必要ないのです。そうやって工務店の不安に付け込み、高額でノウハウ販売をしている建築業者が許せなかったのです。はっきりと言って殺してやりたかったです。そしてもう一つは、粗悪な建物を営業力だけで販売してユーザーを食い物にしている企業への挑戦です。中小のローコスト系ハウスメーカーなんて、みんなこれに当たります。ノウハウの購入や住宅のフランチャイズ加盟には、多額の金額を必要とします。高額なフランチャイズに加盟するとまずは1億円以上の資金が必要となり、さらに毎月フランチャイズ本部に納める上納金もあります。その金額も売り上げの3%くらいを納めるという形態で、各工務店から利益を絞り取っている企業ばかりです。代理店は皆泣いているのです。こうしたフランチャイズ本部の利益は、実質的に家を建てるユーザーが負担しているのです。住宅自体の性能や資材の品質で、住宅の値段が変わるのなら納得がいきます。しかし、フランチャイズ本部の利益を生み出すために、住宅の値段が変わるのには、私は納得できませんでした。
ハウス・オブ・ザ・イヤーを受賞した私は、結局のところ業界の隅に追いやられるのでした。